他者のための自己制御

Gruen, R. L., Esfand, S. M., & Kibbe, M. M. (2020). Altruistic self-regulation in young children. Journal of Experimental Child Psychology.


最近はマシュマロ課題の研究の流行りが再来しているのだろうか, 実行機能や自己制御研究系ではよく見るようになった。今日もマシュマロ研究に一工夫加えたよという研究。

マシュマロ課題は, 何度か紹介しているように今マシュマロを1つ食べるか, 待ってあとでマシュマロを2つもらうかということを検討している。つまり, 報酬をもらうのは自分なわけだが, この研究では他者が報酬をもらうという向社会的行動として満足遅延を位置づけている。同様の検討は, すでに Liu, Gonzalez, & Warneken (2017) のよってなされており, 幼児では自分のためでも他者のためでも待つ選択をするものの, 待ち時間が長い場合はやはり自分のために待つ選択をする傾向が高いことが示された。ただし, この研究は満足遅延選択課題を扱っているので, 満足遅延持続課題を扱ったよというのが今日紹介する研究となる。

条件が, 自分がもらう条件(自己条件), 他の子がもらえる条件(他者条件), 誰ももらえない条件(統制条件)の3つであった。各条件に4-5歳児24名ずつという割り振りである。ここでいう他の子というのは, あとで実験室に来る子と教示しているので, 自分とは関わりのない子どもである。また面白いのは, 統制条件でも24名中18名が待ちたいといったことである。なぜ待ちたいといったのかは推測の域を出ないが, 単に実験者が来るのを持っているということになる。

この研究の目的には直接関係ないが, この研究ではさらに24名の参加者からデータをとっている。そして, そのうち10名が待っている間に不快感情を示したのでやめたと書かれている。おそらく, 1人で待っていて泣いてしまったのだと思うが, 同じアメリカの研究でもこういった報告をしている研究としていない研究がある。日本で私もデータをとった際には, この部分がすごく重要なポイントであると感じた。どのように切り取るのかは難しいが, この点にフォーカスを当てた研究が必要となるだろう。

結果, 統制条件よりも自己条件と他者条件で待ち時間が長いことが示された。

他にも情動調整尺度との関連を検討しているもの, 綺麗な関連は出ていないらしい(条件間の分析はしていないが)。考察としては, なぜ他者のために満足遅延をしているのか, その動機の解釈を行なっている。実際, 実験者が後々確認しにくるわけで, その見られるという認識が評判獲得への動機づけを高めた可能性もある。いずれにしても, 他者のために自分が我慢するというのは日常的にはよくありえることで, その現象およびメカニズムを解明する端緒となる研究とはなりえる。

Yanaoka's research page

大阪教育大学で教員をしている柳岡開地 (Kaichi YANAOKA) のウェブページです。 子どもの認知発達に関心があり,実験や観察を通じて研究を行っています。 ※このウェブページは個人的な場所であり,所属とは関係ありません。 ※リンクいただける方はご一報ください。

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