幼児期の分配行動

McAuliffe, K., Raihani, N. J., & Dunham, Y. (2017). Children are sensitive to norms of giving. Cognition, 167, 151-159.


 見知らぬ他者とペアになって, 自分に1000円が渡され, 先の他者に好きな額を分配しても良いと言われる。もちろん、分配額は0円でも良い。このような状況でいくら分配するのかということが, 独裁者ゲームで検討されている。

 近年, 独裁者ゲームを用いた研究では, 規範が分配額に影響を与えることが示されている。特に, 「いくら分配されるべきか」という予測よりも「他者がどのくらい分配しそうか」という予測に影響を受けることがわかっている  (Bicchieri & Xiao, 2009)。前者は記述的規範であり, 後者は命令的規範に当たる。子どもの文脈でいうと, 記述的規範は仲間内で情報(他の人がこうしている)が共有されることを指しており, 命令的規範は明示的な行動のルールなど知識の獲得に関わることが示されている。子どもはまず大人からの情報を頼りに世界のルールを知ってゆくため命令的規範に敏感であり, 徐々に同年代の他者の行動による記述的規範に敏感になってゆくプロセスが示唆されている (Brown, 1990)。

 この研究では, この2種類の規範が独裁者ゲームにおける分配に与える影響を子どもで検討することを目的としている。ちなみに, 独裁者ゲームの発達的知見については, ①低年齢の子どもは自分の取り分を多くする傾向があり, こうした傾向は年齢が上がるとともに小さくなる (Benenson et al., 2007; Cowell et al., 2016; Rochat et al., 2009) ②年齢の高い子どもは低い子どもよりも等分にしようとする(Fehr et al., 2008; Smith et al., 2013) ③等分以上を分配しようとするものはほとんどいない(Benenson et al., 2007; Blake & Rand, 2010) ことがわかっている。

    参加者: 4~9歳の268名 (サンプルサイズを決定した経緯は割と詳しく書いている)

    実験デザイン: 規範 (命令的規範, 記述的規範, 規範なし) × 規範の内容(自己中心的 (10個中2あげる), 寛容(10個中8あげる))→規範あり群のみ

 結果, 寛容な規範が示された場合には示されない場合よりも多く分配し, 自己中心的な規範が示された場合には示されない場合に比べてより少なく分配していた。こうした傾向は規範の種類には左右されなかった。規範の種類の効果が出なかった理由として色々あげているが, 「みんなが〜している」または「〜すべき」というわずかなフレーズの違いが大きな効果を生まないということは容易に想像できる。子どもにとってはもう少し規範が内的に処理されるにはもう少し時間なり, やりとりなどが必要なのかもしれない。

 この研究で興味深いのは年齢と規範の内容との関係である。4〜5歳は自己中心的な規範に従い, 規範を示されない時に比べてより少なく分配するものがほとんどであった。一方, 8~9歳は寛容な規範に従い, 規範を示されない時に比べて多く分配するものがほとんどであった。しかし, 8~9歳は規範通りに8個分配した訳ではなく, 5~6個という等分が多かった。この結果は, 子どもの中に先に形成されている分配の基準があり, それに近い極端な規範が示された時にそちらに極化する様子を取り上げている可能性がある。つまり, 本人がすでに持っている規範から大きくずれた規範は大きな影響を与えない可能性があることが示唆された。

Yanaoka's research page

大阪教育大学で教員をしている柳岡開地 (Kaichi YANAOKA) のウェブページです。 子どもの認知発達に関心があり,実験や観察を通じて研究を行っています。 ※このウェブページは個人的な場所であり,所属とは関係ありません。 ※リンクいただける方はご一報ください。

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