模倣の柔軟性の続き
Legare, C.H., Wen, N.J., Herrmann, P. A., & Whitehouse, R. (2015). Imitative flexibility and the development of cultural learning. Cognition, 142, 351-361.
次回に続いて過剰模倣の研究 (Legare, Wen, Herrmann, & Whitehouse, 2014)を紹介する。この研究では, 幼児がどのような情報をcueとしてritual actionと判断するのかを検証している。
実験1では, 一連の動作を行ったあとに箱を開ける2種類の動画を提示した。1つは一連の不思議な動作をした後に, ある物体で箱を開けてその物体を箱に入れて閉める動画 (instrumental action), もう1つは同じ不思議な動作をした後に, ある物体で箱を開けるのだが何も入れず閉めてその物体を元に戻す動画であった(ritual action)。この手の研究のtaskは子どもに馴染みがない題材のために, よくわからないものが多い。実際, この動画を真似してくださいと言われても混乱する気がする。という突っ込みは横において, 真似をしてねと言われた幼児 (N=57, 4歳〜5歳半) はritual actionの動画においてより忠実に模倣することが示された。さらに, instrumental actionの動画では箱を開けるために複数の試み行動をすることも示された。
実験1では目標がそもそも明確ではないために過剰模倣をしていた可能性がある。そこで, 実験2では目標を言語教示により明確にしたうえでもなお過剰模倣が生じるのかを検討した。参加児は実験1の4倍の211名で年中児と年長児の2学齢を対象にしていた。用いた言語教示はritual action群では “this is how she always does it” と “this is how we do it” であった。一方, instrumental action群では “she puts it in the box” と “she moves blocks” であった。うーん、ritual action群の教示はやはり目標が明確になっていないような気がする。
ただ, この実験2の課題がわりと面白い。目標としては箱に物体を入れる動画なのだが, 2つの動画の間で目標に至る過程がかなり違っている。そもそも, 因果関係を見込めない行為の連続ではあるが, 両者の違いをどれだけ子どもが認識しているかを質問している。結果, ritual action群はinstrumental action群よりも両者の違いをより多く認識していた。つまり, 目標に至る方法について細かく見ていたということになる。この傾向は, 特に年中児群において見られた。さらに, この両者の差異の認識が模倣の忠実さと弱く相関していた。
以上の結果より, 幼児でさえ非言語的な情報と言語的な情報を用いてinstrumental actionとritual actionを区別していることが示唆された。個人的には, こういった行動系列を学習するうえで目標志向的モードと慣習モードのようなものがある可能性が読み取れておもしろかった。そして, 慣習モードの場合は過剰模倣が増えるのだろうか。ただ, 慣習には例外があり, ある意味慣習でさえ状況依存的といえる。その点を幼児はどのように認識しているのかは気になるところである。
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