刺激が変わることの効果

Sabah, K., Dolk, T., Meiran, N., & Dreisbach, G. (2018). When less is more: costs and benefits of varied vs. fixed content and structure in short-term task switching training. Psychological research, 1-12.


実行機能など認知機能のトレーニング効果が訓練場面以外に転移することのメカニズムについて検討した研究である。特に、トレーニング中において、セッションごとに刺激を変えることの効果について検証している。刺激を新しくすると、課題により注意を向かせるだけでなく、訓練の転移を促すことが知られている。

この研究では、前回の記事と同様に切り替え課題の訓練をターゲットとしている。訓練課題中に使用される刺激を変化させるか、訓練課題中に切り替えが起こる順序を規則的にするか、2つの群わけをして切り替え課題のトレーニングの転移効果が促進されるかを調べている。刺激の変化の有無に関しては、刺激が同じ場合はその課題における練習効果は大きいものの、近転移が起こりにくいと予測している。同様に、順序の変化の有無に関しては、切り替え試行の並びが規則的な場合はその課題における練習効果は大きいものの、近転移は起こりにくいと予想した。

結果, 刺激を変える訓練をすると、固定した場合に比べて訓練課題のswitch costは減少が緩やかであることが示された。ただし、刺激を変える訓練をすると、新しい切り替え課題の切り替え試行では反応時間が短くなることが示された。一方, 固定した場合には、逆に反応時間が伸びてしまうことも示されてた。つまり、刺激を変える訓練は近転移に結びつき、固定した場合は逆に阻害されることが示唆された。ただし、もう1つの順序を規則的にする操作については、予想していた効果が得られなかった。

今回の結果だけからは、なぜ刺激を変える操作の方はうまくいって、順序を規則的にする操作はうまくいかないのかは説明できない。後者はMinear & Shah (2008) に反する結果であり、さらなる研究が求められる。


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大阪教育大学で教員をしている柳岡開地 (Kaichi YANAOKA) のウェブページです。 子どもの認知発達に関心があり,実験や観察を通じて研究を行っています。 ※このウェブページは個人的な場所であり,所属とは関係ありません。 ※リンクいただける方はご一報ください。

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