同年齢同士の葛藤場面の解決
Köymen, B., Lieven, E., Engemann, D. A., Rakoczy, H., Warneken, F., & Tomasello, M. (2014). Children’s norm enforcement in their interactions with peers. Child Development, 85, 1108–1122.
参加児は, 3歳が48人, 5歳が48人の計96人で, 3歳同士24組, 5歳同士で24組つくった。実験条件は, 一致条件と不一致条件の2つを設定した。
この実験では2次元のカードを(この研究ではマグネットとボールを使用) 色または形で分類したあと, 別のルールに切り替えるというDCCS課題を用いている。
一致条件では, DCCS課題を参加児Aが形→色で分類するという順序で学習した。参加児Bは色→形で分類するという順序で学習した。
不一致条件では, DCCS課題を参加児Aが形のルールで分類することを学習し, 参加児Bは色のルールで分類することを学習した。
指標は, 2者間で合意がなされるまでの会話の数, 各セッションでの規範に関わる葛藤の数, 葛藤に関わる発話の主語について検討した
結果, 一致条件において, 3歳児グループは5歳児グループよりも規範に関わる発話が多かった。また, 合意が形成されるまでの発話数は, 一致条件よりも不一致条件の方が多く, 不一致条件における交互作用は有意傾向であった(3歳児の方が多い)。どちらの年齢グループも生物よりも無生物を主語にしており, その傾向は3歳児において顕著であった。
以上の結果より, 著者らは5歳に比べて3歳は状況に関わらず, 批判的な意見を言いあっており, もうひとつのルールを認めようとしないとしている。
実験2では, 5歳と7歳を対象にして, 課題の難易度をあげて (カードの枚数をふやして) 同様の現象を検討している。その結果, 5歳と7歳はほぼ同様の結果を示している。
2つの実験を通して, ペア同士の会話と葛藤解消にむけてのプロセスをみている点は, おもしろいと思う。実際, 子どもの遊びでは似たようなことが起こっている。しかし, 3歳児の解決までに時間がかかるという結果は, それほど新しいものではない。そもそも使用している課題が, 実行機能課題なので3歳児が1つのルールに固執するということは多くの研究で示されている。また著者らもPiagetの見解を出していているが, 3歳児の自己中心性の議論でも散々言われていることのような気もする。
むしろ, 不一致条件でこそ年長児の方が相手のルール (自分は今まで知らなかったのにも関わらず) を認めるという結果が出てもよいと思う。著者らは, この課題の天井効果としているが, 年長児の柔軟性に焦点を当てる方がおもしろいのではないだろうか。
0コメント